第一章

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俺は小さい頃から人を殺すためだけに育てられた。 毎日トレーニングをして、人の体について勉強もした。 基礎が付いたら人形に対して実践を行い、十歳になる頃には既に人を殺していた。 だから組織の中でも群を抜いて人を殺す腕があった。 だが、それだけではない。 俺の父親は何を隠そう、組織のトップに立っている『如月 陵』だからだ。 生まれながらにして人を殺す才能があると周りは言う。 そんなものが血だけで受け継がれるのかはわからないが、今あるこの環境に生まれたことも、一つの才能なのかもしれなかった。 「尋さんすみません。」 先ほど怒られていた少年が、親父がいなくなったと共に俺のもとにやってくる。 「別にいいさ。でも、この世界で生きていくなら、そろそろ覚悟を決めた方がいい。」 「はい…。」 彼は今にも泣きそうな顔をしている。 ここにいる人間は大体が訳ありのものだ。 犯罪を犯していたり、生きる道を失ったものが多い。 その所為か、ほとんどの人は人を殺すことに躊躇はしない。 しかし、彼はどうやら少数派に属しているらしい。 どういう経緯でここまで来たのかわからないが、彼なりの事情というものがあるのだろう。 「まあ、無理はするな。」 俺がそう言うと彼は少し安心したような顔をする。 そして俺に礼を言うと部屋を出て行く。
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