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「相変わらず優しいねえ。」
兄貴分の『篠野 悠眞』が話し掛けてくる。
彼は俺が小さい頃からここにいる言わば先輩で、よく俺の面倒を見てくれていた。
「そんなことないですよ。」
「そうか?でも、お前も無理するなよ。最近出っぱなしだろ?」
そして、今もこうして俺の心配をしてくれる。
「どうってことないですよ。そこまで体力使ってないですし。」
実際、人を殺すのは一撃であるため、ほとんど疲れることもない。
「タフだねえ。でも、休むのも仕事の内だからな。」
そう言うと彼も部屋から出ていく。
「そんなのわかってるよ。」
俺は一人きりになった部屋で一人、そう呟いた。
その夜、俺はすぐにターゲットのもとを訪れた。
あるビルの地下駐車場。
柱の陰に隠れてターゲットが現れるのを待っていた。
コツコツと革靴の音が聞こえてきくる。
相手が一人であると判断して、俺は柱から顔を出す。
「二宮社長。」
俺の声にスーツの男はビクッと体を震わせる。
「何だね君は?」
そう言って如何にも不審そうな顔で俺を見る。
「こんな所まですみません。受付の方で聞きましたら、さっき社長室を出たところだと聞きまして、こちらの方で待たせていただきました。」
「そうか。で、何の用だね?」
先ほどよりも警戒を解いた彼に近付いて行く。
「少々社長さんに頼みたいことがありまして…。」
「頼みたいこと?」
俺はどんどん彼との距離を縮める。
「はい。これは社長さんにしか頼めないことでして…。」
「君、はっきり言ってくれないか?」
そしてとうとう俺は彼の目の前まで来る。
「死んでください。」
俺はそう言うと彼の返事は聞かずにナイフで心臓を一突きする。
その瞬間に彼はその場に倒れ込む。
「くっ…。」
コンクリートの地面にどんどん血の水たまりが広がっていく。
俺はその様子を表情一つ変えずに見ていた。
人の体を知り尽くしているため、一撃で仕事は完了する。
そのおかげで、ほとんど返り血を浴びることもない。
俺は彼が動かなくなったのを確認すると、その場から離れた。
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