第一章

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「相変わらず優しいねえ。」 兄貴分の『篠野 悠眞』が話し掛けてくる。 彼は俺が小さい頃からここにいる言わば先輩で、よく俺の面倒を見てくれていた。 「そんなことないですよ。」 「そうか?でも、お前も無理するなよ。最近出っぱなしだろ?」 そして、今もこうして俺の心配をしてくれる。 「どうってことないですよ。そこまで体力使ってないですし。」 実際、人を殺すのは一撃であるため、ほとんど疲れることもない。 「タフだねえ。でも、休むのも仕事の内だからな。」 そう言うと彼も部屋から出ていく。 「そんなのわかってるよ。」 俺は一人きりになった部屋で一人、そう呟いた。 その夜、俺はすぐにターゲットのもとを訪れた。 あるビルの地下駐車場。 柱の陰に隠れてターゲットが現れるのを待っていた。 コツコツと革靴の音が聞こえてきくる。 相手が一人であると判断して、俺は柱から顔を出す。 「二宮社長。」 俺の声にスーツの男はビクッと体を震わせる。 「何だね君は?」 そう言って如何にも不審そうな顔で俺を見る。 「こんな所まですみません。受付の方で聞きましたら、さっき社長室を出たところだと聞きまして、こちらの方で待たせていただきました。」 「そうか。で、何の用だね?」 先ほどよりも警戒を解いた彼に近付いて行く。 「少々社長さんに頼みたいことがありまして…。」 「頼みたいこと?」 俺はどんどん彼との距離を縮める。 「はい。これは社長さんにしか頼めないことでして…。」 「君、はっきり言ってくれないか?」 そしてとうとう俺は彼の目の前まで来る。 「死んでください。」 俺はそう言うと彼の返事は聞かずにナイフで心臓を一突きする。 その瞬間に彼はその場に倒れ込む。 「くっ…。」 コンクリートの地面にどんどん血の水たまりが広がっていく。 俺はその様子を表情一つ変えずに見ていた。 人の体を知り尽くしているため、一撃で仕事は完了する。 そのおかげで、ほとんど返り血を浴びることもない。 俺は彼が動かなくなったのを確認すると、その場から離れた。
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