第一章

5/6
前へ
/86ページ
次へ
そのまま街に出ると、俺は行きつけのバーへと入っていく。 そして、カウンター席に座るとビールを頼む。 「今日もお仕事帰りですか?」 カウンターの向こうからマスターが問いかける。 「まあ。」 「大変ですね。」 そう言うと俺の目の前にビールを置く。 彼はけして俺の仕事のことを知っているわけじゃない。 でも、ここに来るたびにいつもこう言ってくる。 「マスターは人が死ぬのってどう思う?」 俺はビールを一口飲むとそう問いかける。 「死、ですか?…悲しいことだと思いますけど。」 「普通はそうだよな…。」 でも、俺たちの世界は違う。 俺達は人を殺すことで金をもらっている。 つまり、人が死んで喜びを感じているのだ。 「どうしてそんなこと聞くんですか?」 「いや…ちょっと。」 そう言うと俺は言葉を濁すようにビールを飲む。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加