第一章

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「尋さんはどう思うんですか?」 「え?」 「だから、人が死ぬことについてです。」 俺はどう答えたらいいかわからず、黙り込んでしまった。 俺の中で人が死ぬこと=金が入ること。 それは組織の人間と変わらない。 ただ、実際に人が死ぬということ事態を考えたら、確かに悲しいことなのかもしれない。 もし、親父が死んだら。 もし、悠眞が死んだら。 もし、自分が死んだら…。 「すみません、なんか難しい質問をしてしまったようで。」 「いや、俺も同じこと聞いたし。」 「でも、あなたにとっては難しいことなんでしょ?」 「まあ、そうだな。」 その後、彼は一切俺に話しかけることはなかった。 それはいつもと同じこと。 さっきが異常だっただけだ。 俺は一人静かにビールを飲み続けた。
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