第二章

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俺は近くの公園までくると、ベンチに腰をおろした。 昼時とあって学生や会社員の姿が目立つ。 付近には、オフィスビルや学校が多く立ち並んでいて、昼になるとこうして公園で昼食を取る人が多いのだ。 彼らはとても楽しそうに会話をしては、笑顔を見せる。 彼らの世界はこちらとは比べ物にならないくらい平和そうだ。 俺はその様子をただ見ていた。 普通の親のもとで暮らしていたら、俺も今頃彼らのように普通の職業について、普通に楽しく暮らしていたのかもしれない。 それなのに、彼に引き取られたことによって、それは全て失ったのだ。 そう考えると怒りが込み上げてくる。 息子なんてもらわなくても、組織の人間は腐るほどいる。 そいつらにいくらだって人を殺させればいいのに、なぜ俺を引き取ってまで殺し屋にさせたんだ? 本当の親は、今どこにいるんだ? もしかして、あいつが殺したのか? 俺はどんどん親父のことが信じられなくなった。 殺しの世界でトップに君臨している彼を少しは尊敬していた。 だが、今はそれすらも霞んでしまう。 この先、彼の下で働き続ける自信がなくなっていた。
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