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「アンタに分かるか!この苦しみが!この辛さが!ただ生きているだけで暴力を振られ、迫害され、大切な人や物を奪われ続けてきた俺達のこの思いが!」
青年の遠雷にも似た怒鳴り声に女性はただ何も言えなくなっていた。確かに自分に分かるはずがないと、そう思いながら自分と同じ家に生まれながら、まったく違う道を歩んだ弟を今になって理解しようとしている女性がいた。
「確かに私には貴方達の苦しみも辛さもわかりません。ですが、それを理解しようとすることはできます。だから」
「だからなんだ。”理解しようとすることはできる”?ふざけるなよ。今まで何も理解しようとしなかったからこうなったんだろ!!!」
青年の反論に女性は言葉を詰まらせる。それが青年の反論に対して肯定を示すものだと解っているが、青年の言ったことは他でもない真実。それゆえに女性は何も言えずにいた。
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