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   無表情のリクが怖い。  そんな感情が僕の中で渦巻いていて、声を掛けようにもかけられない。    でもリクは喋らない。  喋ってはくれない。  僕も喋らない。  喋れないのだ。   「なあ、カイ」    不意にリクが僕を呼ぶ。僕はそれにビクつくも、平然を装ってマンガから目を離してリクを見た。   「何?」 「お前、視えてるんだよな」    リクはそう言ってからゆっくりと顔を僕に向け、無表情のままで僕の目を見る。僕は手にじっとりした汗を掻きながら、取り繕うように笑ってみせる。   「何、が?」 「とぼけんなよ。俺の言ってる意味、分かってるんだろ?」 「…………」 「なあ、カイ。答えろよ。お前にはさ──ユウレイが、視えてるんだろ?」    視えてない、視えてるわけがない。そう言いたかった。晴れた夜の日なら、そう言えたのに……。    僕は、答えられない。  今夜は雨だから。  雨の日の夜だから今の僕には──“視えてるんだ”。    そう。リクの後ろにいる“それ”だって視えるし、いつもやってくる“奴”も視える。その他に居る“そーいうモノ”だって、たくさん視えてる。    正直言うと、もう、嫌だった。   「ねえリク、それは“リク自身”が僕に聞いてるの? それとも……“リクじゃない誰か”が、聞いてるの……?」    僕がそう問掛けると、リクは──否、“リクじゃない誰か”は、リクの身体を使って、口許を大きく歪めながら……笑った。  
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