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──あは……あははっ! あははははははははっ!!
甲高い笑い声が、真っ暗な中で渦を巻くようにして聴こえてくる。薺姉ちゃんの声っぽいけど……壊れた人形みたいに笑ってて、判断がしにくくて仕方ない。
──死んじゃえ! カイなんて死んじゃえば良いのよ! ねえ、カイは『死に損い』でしょ? 『あの時』『カイだけが』『死に損った』んでしょ? じゃあ、今、ここで、死になさいよ! 死なないなら、あたしがカイを殺してあげる! あははははっ!
「うるさい……僕を『死に損い』と呼ぶな……!」
暗闇の中で僕は声を上げ。そしてただ、聴こえてくる声に対して悪態を吐く事しか出来ない。
──ねえ、自分だけ『死に損って』どんな気分? 苦しい? 悔しい? 悲しい? 楽しい? それとも……嬉しい?
楽しそうに──心の底から楽しそうに、薺姉ちゃんの声は、笑いながら尋ねて来た。僕はそれにぴくりと反応し、姉ちゃんの言葉をうわ言のように呟く。
「うれ、しい……? 僕だけ……僕だけが『死に損った』のに、僕は嬉しいのか……?」
僕が『死に損った』あの時──僕は、確かに嬉しい、と、思った。自分だけが『死に損った』のと同時に、自分だけが『生き残った』からだ。
そう、“自分だけが”、だ。
──そりゃそうよね、嬉しいわよね。だって、カイは生き残ったんだもの。嬉しくて当然よね。
薺姉ちゃんは僕を諭すようにそう言うと、くすくすと笑いながら「そう思うのが、当たり前の事なのよ」と、小さく呟いた。
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