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「あー…暇だなぁ」
廻間世界でも天気というものはあるらしい。それ故に外はしとしと雨が降り、曇り空が覆っているのだ。
そして先ほどぼやいた彼女―――『唄鶇』メイビスは窓の外を見上げながら、部屋でゴロゴロしていた。
「お前、何しに来たんだよ…」
「傘無いから雨宿り」
「帰れよ」
…失敬。
テクノカルトの部屋でゴロゴロしていた。
「えー、だってぇ! 胡飲酒のとこに遊びに来たのはいいけど、帰ろうとしたら突然雨降ってきてさー。傘持ってきてなかったから、帰るに帰れなくなったんだもの」
そう言ってソファーに寝そべり、メイビスは近くにあった棒つき飴の袋へ手を突っ込む。
が、それはテクノカルトによって取り上げられ、阻止された。
「というか何で無所属のお前が、オラトリオ本部に入れるんだ」
「胡飲酒とヘルが入れてくれたの」
「………」
甘すぎる……。
背凭れ付き回転椅子に乗ったまま回り、テクノカルトは盛大なため息をついた。
漏れたら大変な情報だってあるのに、全く。
部屋でゴロゴロしているメイビスを一瞥し、机へ向かった。
「ねー、テクノは何してるの」
「仕事。見りゃわかるでしょ」
サングラスの位置を指で直し、無数に浮かぶ液晶画面を操作する。
構ってはいられない。
今日中に情報を整理し、更新しなければならないのだ。
無数の液晶画面とにらめっこしているテクノカルトを見つめていたメイビスだったが、やがてむくりとソファーから起き上がると彼の元へ足を進めた。
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