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異世界レーヴァテイン某所。
否、とある研究所。
しかし研究所と言っても既に廃墟と化したその建物に、一つの人影が現れた。
「ここですね…」
肩ほどまで伸びる薄紫の髪、黒い服。赤い本を携えたその人物――ダスクは、その澄んだ蒼い瞳でかつて研究所であった廃墟を見上げていた。
「七年前……例の事件の証拠があるかどうかはわかりませんが、仕事ですからね」
七年前の事件を探るため、研究所内に遺された情報を僅かでも持ち帰る。
それが今回、ダスクに委託された任務。
視線を降ろし、彼は戸惑いも畏れもなく研究所の中へ足を踏み入れた。
中は酷く荒れていた。割れた硝子の破片が散乱する医療や実験器具、そして引き裂かれた書類などで足の踏み場もない状態である。
まるで、何か得体の知れないようなものが暴れ回ったような。
「……やはり、もう一人連れてきた方が無難でしたか」
辺りを一望し、ダスクは小さくため息をつく。
……これは普通に探しているようでは時間がかかりそうだ。
それに研究者のことだ。大事なデータは全て彼等に持ち逃げされているに違いないだろう。
「望みは薄いですかね…む?」
ふと、あるものがダスクの目に止まった。
散乱した書類に埋もれるようにしてうつ伏せで倒れる、一人の人間。
背中の骨は砕け散り、既に白骨化しているため個人の断定はできないものの……白衣を着ていることから、おそらくこの研究所にいた研究者だろう。
しかし、問題はそこではない。
その白骨化した遺体は、七冊のファイルを抱えていた。
「……御愁傷様です」
はたして本当に心からそう思っているのかどうか。
遺体を踏まないように脇を通り抜け、ファイルを拾い上げる。
そして、適当にページを開いてみた。
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