七年前の爪痕

3/3
前へ
/35ページ
次へ
  「これは、実験の企画概要ですね……」  やはり、ファイルの中身は例の“事件”に関連したものであった。  人体実験の概要、人体実験における効果とその内容、必要な器具や機械、実験方法……綺麗に、そして細かく記されている。  更には、ファイルの中にフロッピーが挟まっているのも発見した。 「では、こちらは…?」  ダスクは残り三冊のファイルを拾い上げ、開く。 「……被験者リスト」  人体実験をその身に行われた者――被験者のリストだった。 「こんなにたくさん…」  顔写真も貼られているため、とても見やすい。  パラパラとページをめくっていったダスクだったが、ふと一人の顔写真が貼られているページに差し掛かった時――手を止めた。 「この方は……」  驚きの表情で、そのページを見つめるダスク。しばらくそのページを見つめていたが、やがてパタンとファイルを閉じた。 「後でテクノカルトに解析を頼むとしましょう……フロッピーもついていることですし」  その七冊のファイルを自身が持っていた赤い本のページの中に入れると、ダスクは研究所の出口へと足を向けた。 「まさか……あの方が」  その呟きは、誰にも聞こえない。    『七年前の爪痕』 それは、負の遺産 fin
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加