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凛圭が呟いた瞬間、ふることが肉まんを持つ手を止めたような気がした。どうやら、図星らしい。
あまりにわかりやすいふることの反応に、彼女は盛大にため息をついた。
「やっぱりネ…ガゼルクランを下界へ叩き戻してからというもの、妙にふることはその下界を気にしすぎだったアルよ」
「おやおや…バレてたのかい」
「当たり前ネ、一体何年付き合ってると思ってるアルか」
彼と旧友の仲であるワイスには程遠いものの、ふることへの連絡係を担う凛圭は他のメンバーより彼の些細な変化を見抜くことが出来る。
彼が嘘や隠し事をしても、すぐにわかるのだ。
凛圭はまっすぐな眼差しでふることに向き直った。
「ヨー、なら言うけど。そんなに気にかけるのなら何故ガゼルクランを下界へ叩き戻したアルか? 確かに彼は性格上の問題はあったネ。けど、“きみは蔭人になるべきではない”とか言ってすぐさま下界へ永久的に追い返すだなんて……温和なふることがやる諸行じゃないアルよ」
「ははは! 温和かどうかはわからないけど、別にわたしは彼の性格が気に入らなくて追い出した訳ではないさ。むしろ好きだよ、ああいう意思表示ができる子は」
凛圭の眼差しを他所に、まるで他人事のようにへらへらと笑うふること。
すると、彼の表情は悪戯っぽい微笑に変わった。
「気に入ったからこそ、彼を下界へ叩き戻したのさ」
「え?」
凛圭は首を傾げた。
気に入ったからこそ、下界へ叩き戻した?
一体それはどういう意味なのか。厄介払いとどう違うのか。
頭の中がごちゃごちゃになっている凛圭に、ふることはこう述べた。
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