と或る異世界の神様の話

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   ……んー?  何、俺様に何の用?  え、暇だから来た?  おいおい何だよそれ。つーか俺も暇じゃないんだけど。  …ってそんなに怒んなよ。  あーわかったわかった、じゃあ俺が何か話でもしてやるよ。  そうだな…古き世界の語部ほどではないが、俺が知る“と或る異世界の神様”の話をしようか。  お前さんは、はるか昔にと或る一つの異世界が存在していたのを知っているかな?  争いはおろか種族の差別も偏見とは無縁の、平和で活気と幸せに満ち溢れた世界。  その世界を創造した神様は、そんな世界のことが大好きだった。  そこの神様自身も結構風変わりな神様だったようでね。最初はちょくちょく地上に降り立つだけだったが、やがては自らが創造した世界の住人達と一緒に生活をするようになった。  世界の住人達との生活は本当に楽しかったそうだよ。時にはパーティー開いて、たくさんの住人を招いて、イベントやって……毎日が新鮮で、本当に充実した日々だったそうだ。  世界の住人達と同じ大地で過ごす日々の暮らしは、神様にとって幸せ以外の何物でもない一番の宝物だった。  しかし、そんな日常は突如として終わりを迎えた。  ある時その神様は、自分の世界に生まれた小さな歪みの存在に気づいた。豆粒程のほんの小さな歪み。  だが、神様はその小さな歪みを気に留めずにいつものように地上から世界と世界の住人を見守ることに決めた。  この程度なら、特に世界に影響は無いだろうと思っていたんだろうね。  けれども、後々考えてみればそれは神様の致命的な判断だった。  その小さな歪みは波紋を広げ、やがて世界全体を覆う程の大きな亀裂となった時には  神様の大好きなその世界は、あっという間に崩壊してしまった。  …世界って、創造するのは長い年月がかかるけど滅亡するのはあっという間なんだって。  まるで完成したパズルのピースが全て抜け落ちるように、目の前の見慣れた景色が崩れていくんだ。  言うまでもなく、その世界に住むたくさんの生命も、住人も、世界の残骸とともに流れ落ちていき――世界の創造神である神様だけが一人取り残された。
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