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「残りの奴等は……サバトが殺ったのか」
両手にトンファーを握り、顔が横一線に真っ二つになった死骸を一瞥する男――エコラス。
サバトと呼ばれた彼女は小さく頷いた。
「ああ、今頃……新毒で消滅していることだろう。あのさ、エコラ…」
「おや、早いものですねぇ」
サバトの言葉を遮り頭上から聞き覚えのある声が投げ掛けられた同時、屋根の上に一人の青年が現れる。
薄紫のさらさらショートヘアに黄色ラインが入った黒い帽子に同色の服を纏ったその青年の姿を見上げ、エコラスは呟いた。
「ダスク……」
「流石、“絶対無音の打手”と“毒蠍の摩天楼”です。お見事、と言いましょうか」
「…………」
サバトは死骸となった名も無き男に視線を移す。
確かにこの男は、罪を犯した。
しかし、こんな男を殺した私も罪人なのではないのか?
法で裁けないからと言って、惨たらしく殺すのは……。
「さて……済んだら早急に帰りますよ。長居は無用、この世界の者に蔭人の存在を知られては困りますからね」
ダスクと呼ばれた青年は屋根上から飛び降り着地すると、青いトンネルのような次元を開き――そして、身を預けるようにその中へ消えていく。
エコラスもそれに続こうとしたが、彼はふいに足を止めた。
「サバト、確かに俺達のやってることは許されない。けどな」
彼は、背を向けたまま言う。
「どうせ地獄に落ちるなら、地獄に叩き落とさなきゃならない奴等を先に落とす。それで善人な奴等が救われるなら尚更だ。俺は、そう考えてる」
――だから、あまり思い詰めるなよ。
そう聞こえた気がした時には、既にエコラスは次元――『廻間回路』へと消えていた。
「……それ、励ましのつもりなの?」
馬鹿、と小さく呟きエコラスの後を追うサバト。
しかし、彼女の顔に少しだけ明るさが戻っていたのはまた別の話――――。
fin
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