黙示録の前奏曲

3/4
前へ
/35ページ
次へ
  白いマントを翻し紅い瞳を胡飲酒の傍らに向け 「……はかどってはないみいね」 手付かずの書類の山に、盛大なため息をつく首長――ヘル。 見た目は胡飲酒と同い年だが、これでも立派な指導者である。 「デスクワークは苦手です」 「仕方ないわね……じゃ、これはどう?」 べしゃっと机に伏せた胡飲酒に呆れつつも、ヘルは指に挟む一枚の紙切れを出した。 「何それ」 「貴方の大好きな野外任務内容」 「何!?」 「ナイス反応ありがとう」 一気に活性化した胡飲酒。 並大抵ではない切り替えの早さだったが、冷静にツッコミを入れたヘルは紙切れを胡飲酒に渡した。 「任務内容はこうよ。世界各地を回り、現状の調査をした上で本部に報告。その他の行動は、蔭人と機関の規則に違反していなければ自由とする」 OK? と尋ねたヘルに胡飲酒はニヤリと笑みし、椅子から立ち上がると傍らの二丁拳銃を腰に着けた。 「任せな、良い結果持ってきてやるからさ」 「ええ」 気分揚々でヘルの横をすり抜け、胡飲酒は部屋を後にする。 その表情は、嬉しさという輝きに満ちていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加