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彼は自転車便のアルバイトをしていた。自転車便とは文字どうり自転車で荷物を届ける宅配便の仕事だ。その日も彼は仕事にはげんでいた。自転車を走らせていては転んだり車とぶつかりそうになったりと毎日のように不幸なめにあっていた。事務所に帰る途中高校の友人に出会った。今日はクリスマスイブだった。昌之は皆に「今日はどこ行くの?もしかしてクリスマスパーティ?」と聞くと、友人は「おうよ、たった三千円で食べ放題飲み放題よ。良かった楽昌之も来るか?」と昌之を誘ってきたが、「まだバイト中だから」というと友人は「バイトバイトっておまえはお金の亡者か?友情はお金じゃ買えないぞ。なんでお金が必要なんだ?」と聞くと昌之は「うちの親無職だから」と答えた。昌之は友人たちと分かれると両親について頭を悩まされるのだった。たとえば無職の理由が不況によるリストラや事故のせいならば、同情の余地はある。しかし昌之の父は「父さんにはもっと自分にふさわしい有意義な仕事があると思うんだ。」などと夢見がちな事を言って定職につかず、母は「母さんは馬券を買っているんじゃないの。夢を買って投資しているの❤」などと言って家事すらしない。昌之は思った「働かざる者喰うべからず‼しかし僕は信じている‼最後に笑うのはきっとひたむきで真面目な奴なのだと‼」
ところが事務所に戻ると課長は言った。「西崎くん。君はクビだ。」 昌之はショックを受け反論した。「な、なんでですか⁉仕事はキチンとこなしているのに」
「確かに君はウチの中では最も速くて優秀だ。」
「だったらなんで⁉」
「西崎くん君は年齢を偽っているな。ウチの募集規定は18歳以上なのに… 君はまだ16歳だそうじゃないか。」
昌之は反論した「な…なぜそれを…⁉」
課長はこう言った「先程、君のご両親がきてそう告げられた。まったく… まじめで優秀な若者と思っていたのに裏切られたよ。とりあえず今月の給料17万円はご両親に渡しておいたから――――――――――――」 昌之が再び反論した。「は⁉渡したって?あの親に給料全額‼⁉」「そりゃ君は高校生だったのだから、親に渡すのは当然だろ?」って昌之は再び反論した。「あの親に17万も渡したら、全部パチスロや夢投資で消えるじゃないですか」
「何をバカな… そんな親がどこに…」
「いるから年齢を偽って僕がバイトなんかしてるんですよ‼」 昌之は急いで家に戻ったが両親はいなかった。ちゃぶ台に給料袋と手紙が置いてあった。
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