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「いや、うん……えっと……」
口を濁す沙希。
私のためにその先の言葉をハッキリ言わない沙希は優しい。
彼女のためにも、いい加減、いつまでもこんなトークを続けるわけにいかないですね。
「よし、部活の時間! もう行かなきゃ!」
「あ、今日演劇部だっけ?」
いきなり立ち上がった私にちょっとビックリしながらも、私に合わせて沙希も明るい声を出す。
「そう! 新入生も入ったことだし、今日はこれからの活動内容のミーティングなの!」
こぶしを天井に向かって突き上げながらやる気を出してきた私に、沙希は優しく微笑んでくれた。
「じゃあ私、先に帰ってるからね」
ポンポンと私の肩を叩く沙希。
「うん! ごめんね今日は……」
今朝のあっくんとのやり取りでため息ばかりついてて……。
私は今日一日の反省と謝罪を沙希に伝えた。
そんな私に沙希は片目だけを閉じ、可愛くウインクしながら応えてくれる。
「いいって。私にぐらいため息をこぼしなさいな!」
あぁ、沙希。
やっぱり持つべきものは親友だね。
って、ごく最近、私は似たようなフレーズを言われた気がします。
いえ、似たようなじゃあありませんね。
ていうか『気がする』というほど、そんなに時間は経っていません。
今朝のあっくんじゃあないですか。
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