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ざわめく声。
それに重なるかのような心臓の音。
私にとってはいつもの光景。
変わらない光景。
登校中の生徒が行き交う校舎内で私、真山流香(まやま るか)は、目の前にいる幼なじみの岡田篤(おかだ あつし)に両手に抱えるぐらいの包みを差し出していた。
「はい、お弁当」
「さんきゅ! 助かったよ流香! わりぃな、持ってきてもらっちまって」
包みを受け取った彼に私はそう告げられる。
同時に、陽によく焼けた小麦色の顔から発せられる屈託のない笑顔も向けられ、私の胸は否応なしにも高鳴ってしまった。
必殺、胸キュン笑顔。
心の準備が出来てからにしてほしいです。
「う、ううん。ちょうどおばさんに会ったし……。あっくんのことだから、絶対ピンチになるからね!」
必死に平静を装おうとしている私。
でも岡田篤――あっくんは、さらに眩しい笑顔を放ってきた。
「さっすが、持つべきものは幼なじみ! 分かってるな~」
きらきらと輝く効果音があっくんから聞こえてきた気がした。
最高に輝かしいあっくんの笑顔を浴びた私は、もちろん、動揺しています。
あわわわ。
不意打ちでそんな顔をしないでよ。
ヤバイです……効いたぁ~~!
うぅ……どうしよう……。
顔が赤くなっていないかな?
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