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だけど、まったく私の様子に気付いていないのか。
あっくんは私が渡したお弁当にすりすりと頬ずりしながら、まだ私に感謝している。
「これがないと午後もたないからな~。本当にマジで助かったわ! 腹減って途中で行き倒れてたかもしれないからな」
言い終わると、ぽんぽんと私の頭を軽く撫でるあっくん。
その行動に、私はちょっとうな垂れてしまった。
何も気付いていないや。
赤い顔、気にする必要もないみたい。
「気を付けてよ? いくら家が隣同士だからって、そうそう持ってきてあげられない時もあるんだからね!」
ちょっと元気がなくなりつつも、なるべくその事を悟られないようにと思い、私はびしぃっと人差し指を彼に向けて強気で返してみた。
でもそれが逆に、仇となってしまったのは想定外です。
「へいへい。あんまり小うるさいと彼氏出来ないぞ流香!」
――ズキンッ
何かが胸に突き刺さったような感覚を覚える私。
あっくんから告げられた些細な言葉は、私に十分なダメージを与えてくれるもの。
あ~~、本当にもう!
ひとの気持ちを知らないで、どうしてそれを言っちゃうかな。
あ。
気持ちを知らないから言えるんでしたね。
「う、うるさいなぁ! べ、べべ、別に彼氏なんて……っ!」
あんたに言われたくないんですけど?
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