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すでにどもりがちになってしまっている私。
そんな私にあっくんは、さらに傷口を抉るような言葉を言い放つ。
「早く俺を安心させろよ? なかなかいないぞ~? こんなに幼なじみの恋愛事情を心配してくれるヤツは!」
「あははは」と笑いながら言う彼へ、同じく笑いながら顔を向ける私。
でもそんな表情とは裏腹に、私の心臓は最初の鼓動とは一転して痛み出していた。
――ズキンッ
――ズキンッ
ひとの気も知らないで。
一発殴ってやろうかコイツ。
「もー、ほら予鈴が鳴ってるよ! 早く教室に行かないと!」
ぐっと堪えたこぶしをあっくんから見えないように後ろへ隠す。
なんだって私はこんな人の気持ちに気付かないような超鈍感男のことが好きなんだろう。
悲しくなってきました。
「あっ、まずい遅刻する! じゃーな、サンキュ~! お礼にいつでも男の相談にのってやるからな!」
とどめの右ストレート炸裂。
殴られたのは私の方でした。
ははっ。
もう涙も出てきませんとも。
いつものことですから。
はい。
走り去ったあっくんを見送ったあと、予鈴が鳴っているのも最早どうでもよくなり、とぼとぼと私は自分の教室へと戻った。
頭の中で、今取り交わされた会話が重く自分へとのしかかってきているのを感じながら。
あんたにとって、私は何なの……。
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