五章 特訓の先には……

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「蓮先輩はどうしていつも笑ってるんですか?」  我ながら変な質問だと思う。  笑顔でいることは悪いことじゃない。むしろ素敵なことだと思う。  でも、蓮先輩と接する機会が増えてきたことによってわかってきたことがあった。  蓮先輩の笑顔には、時折寂しさのような、悲しさのような、マイナスの感情が混ざっているような気がする。  悪く言えば無理して笑っているような気がするのだ。  俺の突然の問いに蓮先輩は少しだけ驚いたような表情を浮かべたが、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻って言った。 「毎日を笑顔で過ごせたら幸せだと思わない?」  そう言って俺に笑いかけ、続ける。 「私は今凄く幸せなの。夏紀がいて、由香里がいて、望がいて……亮介くんがいてくれる。そんな今の学園生活がとっても幸せ。だから……私は笑顔でいなきゃいけないの」  蓮先輩の笑顔には、きっと俺が思っている以上に深い意味があるんだ。  最後に彼女はぽつりと呟いた。 『じゃないと私はここにいれなくなってしまうから』――と。
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