六章 彼女の笑顔

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 蓮先輩のお弁当はどれも美味しくて、あっという間に食べ尽くしてしまった。 「全部食べてくれたんだぁ」 「もちろんですよ。ごちそうさまでした」 「おそまつさまー!」  それにしても…… 「この季節の外気温は凶器ですね」 「そうだね……」  現在冬真っ只中。屋上のチョイスは明らかにミステイク。  見ると、蓮先輩も自分の分のお弁当を食べ終わっていた。 「中入りましょうか」 「うん、音楽室に戻ろ」  俺としてはもうちょっと蓮先輩と二人きりでいたかったような気もするが、こんな下心丸出しの状態でいたら嫌われてしまうだろうからここは自重する。 「緊張……してますか?」  音楽室への帰り道、蓮先輩に訪ねる。 「そりゃしてるよぉ。もう心臓の音がさっきからうるさくて」  本番前のこんな時でも、蓮先輩はそう言って無邪気に笑っていた。
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