六章 彼女の笑顔

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 生徒会室は新校舎の最上階にあるので、階段を一階上がるだけですぐに目的の場所に着く。  若干重い屋上の扉を押し開け、屋上に出てみるが、その開けた空間には望さんどころか人っ子一人見当たらなかった。 「望のやつ、人のこと呼び出しといてどういうつもりよ」  望さんに対してだけは蓮先輩も笑顔以外の、怒りや不満の表情を見せる。  俺にはそれがとても羨ましく思えた。  蓮先輩の不機嫌ボルテージが上昇し始めた頃、俺の携帯に再び着信が入る……今度は比泉からだ。 「もしもし?」 『グラウンドの上空に視線を向けろ』  言われてグラウンドの空を見ると、大きな音と共に冬の夜空に真っ赤な花が咲いた。 「すご……」  隣にいる蓮先輩もこれには度肝を抜かれたようだ。 「冬の花火ってのも、なかなかいいもんですね」 「うん、あの二人もたまにはいいことするんだね」  俺と蓮先輩は、少しの間時間を忘れて夜空に咲く花々を静かに眺めていた。
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