5人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
そもそも、あの事件以来、俺は修一から持ち込まれた話を断ったことがない。
あれから5年が経つけれど、俺達はケンカなんかしたことがない。
できない。
俺のせいでヤツに一生残る傷を残した。
俺が、馬鹿だったばかりに。
なんの関係もない、真っ当に生きているヤツに、不当な傷を付けた。
少し、昔話をする。
当時、俺の家は崩壊寸前だった。
在宅で保険の仕事をしていた父は、ほとんどアルコール中毒で。
昼を過ぎると酒を飲んだ。
学校から帰ると、毎日のように父は酔っていて。
俺はパートから母が帰るまで、父の暴言と暴力に晒されていた。
「お前なんかが生まれてきたばかりに」
自分は夢を諦めて、生活の為に稼がなきゃいけなくなった。
「クソガキめ」
何の役にも立たないクセに、金だけ食いやがって。
さっさと出ていけ。
そうしたら、母親とも別れて、また夢を追うんだと。
母は泣いた。
「お前を守ってやりたいけれど」
自分が働かなければお前の学費が工面できないと。
「なぜあんな男と」
自分は結婚したのかと。
それでも、母は痣だらけになりながら職場に行き。
それでも、俺は痣だらけになりながら学校に行った。
最初のコメントを投稿しよう!