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は?
美人って女の子に使う言葉じゃねぇ?
しかも、はっちゃけた人って。
「ケンカ売ってんのか?買うぞ。」
「事実だろ?悠紀が顔も性格もイイっ奴てのは」
お前……。
修一。
「今、俺が女顔だとはっきり肯定したな?」
不機嫌に唸る俺に、猛は「いやいや、」と首を振った。
「女顔って訳じゃないっスよ?それだけ整った顔だと、男臭くないだけで。いくら悠紀さんでも、女装したら男だってわかります。」
お前……。
猛。
「本気でケンカ売ってんのか?」
ここまで来ると腹を立てるのも馬鹿らしい。
脱力している俺に、修一が追い撃ちをかける。
「ぱっちり二重にばさばさ睫毛。のくせに、ちょっと生意気な感じの吊り目。華奢な顎とエロい唇。あとは?」
「あー。唇、エロいっスよね。」
だぁっ!
もぅやめてくれ。
俺は自分のツラが嫌いなんだよ。
修一は知らないと思うけど……、
知らないでいて欲しいけど。
無知っていうのは恐ろしいもので。
あの時、快楽も手伝って気楽にしていた行為が。
世間では、ホモSexと呼ばれ、俺は自分がゲイと呼ばれるということを知った。
その時の衝撃。
あの時の戦慄。
こんな顔さえしていなければ。
きっと今頃、こんな罪悪を抱えずに済んだのに。
中学時代のあの性体験がなければ、俺は自分より大きな胸に抱かれる心地良さを知らずに済んだ。
男親に抱きしめられた経験のない俺にとって、大きな手と広い胸板は甘美な麻薬だった。
今でも、女の腕や柔らかな胸の膨らみよりも。
時に暴力的なほど力強い、同性の腕に収まりたい自分がいる……。
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