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むせ返るような草の臭い。 狂ったような蝉の鳴き声。 目に痛いほど鮮やかな赤。 耳元では鼓動が、頭を割りそうな大音量で響いている。 「ヤ…ヤバイよ!」 「どぉすんだよ、ヒロっ!!マジで刺してんじゃねぇよ…っ!」 パニックを起こしている少年達。 俺は、力が思うように伝わらない。 膝が震えて、立つこともままならない。 ほとんど這うようにして、鮮血にまみれて呻く修一に近づく。 「どうしよう!? なぁ、どうしよう」 バタフライナイフを握り絞めた少年がオロオロとせわしなく視線を迷わせる。 「病院…、ねぇ! 救急車っ!! 呼んでよっ!!! 早く……っ」 俺の喚き声に、バタフライナイフを振りかざしてヒロが絶叫した。 「うぁぁぁぁぁっっう、うぁぁぁぁっっ!!!」 数人いた少年達は、ヒロの絶叫に驚いて後退りをした。 「やめろよぉ! 救急車呼ぶなよぉ! 警察来んだろぉ!? どぉすんだよぉっ」 「ヤベェよ、ヒロ」 「ヤベェ、キレた」 「ウルセェんだよ! ヒロ、早く救急車呼べよっ こんぐらいのケガなら自首すりゃたいした罪になんねぇ! さっさと救急車呼べって言ってんだよ! 時間経って失血させたらその方がヤベェんだ!!」 修一の顔は、脂汗が引き、代わりにどんどん青ざめていく。 俺は更に叫んだ。 「傷害事件を殺人事件にするつもりかって聞いてんだよっ! 馬鹿野郎が!! さっさと呼びやがれ……っ!!」 蒼白なのはヒロも同様で。 俺の言っている意味すら、どれだけ理解しているかわからない。
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