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ドアをノックすると猛はベッドから上半身を起こした。
部屋には軽快な洋楽が流れている。
「あ、悠紀さん」
「なんだ、お前。今日からだってわかってるんなら、少しは用意して待ってろ」
「いや、待ってる間って緊張しません?来るぞ、来るぞと思って待っているとソワソワしちゃって」
だからって。
普通、ここまで何も準備しないで客を迎えられるもんか?
上下スウェットの部屋着姿。
寛ぎ切った表情。
俺のために少しでも片付けた形跡のない乱雑な部屋。
机の上まで片付けていないと、猛のやる気自体を疑う。
「とりあえず、5分やるから机を片付けろ」
苛立ちを込めた口調に、猛はニヤッと笑う。
なんだよ?
「母さんは、もう出掛けました?」
ああ。
コイツ、さっきまでの俺の猫被りを聞いてやがったな?
「ずいぶん信用されているみたいだな?お前は約束を破らない人間だと、自信満々に断言された」
「へえ?」
なんだ?
意外そうな顔しやがって。
まるで初めて聞いたみたいに……。
さっきまで聞き耳を立てていたんだろう?
「高校を退学したいなんて、俺からしたら約束を破るようなもんだと思うけどな?」
猛は修一によく似た、フッという笑い方をした。
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