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「いくつか、言いたいことがある」
「はい。」
「ひとつ、高校に推薦入学したのはお前のミスだ。それで退学すると言っているお前は、中学校の恩師も、高校も裏切っている。当然、親もだ。」
猛は痛そうに顔をしかめて頷いた。
「なぜその前に言わなかった?お前が退学をしたら、お前が卒業した中学校は信用を失う。お前の後輩が、お前の高校に行きたくても、お前のせいで確実に推薦枠は減らされる。下手をすれば無くなっているかもな?」
はっとして、猛は顔を上げた。
「思い付かなかったか?個人の問題で済むとでも?」
「推薦ってのは、そういうことだよ。一種の取引だ。お前は部活で成果を上げることを期待されて入学している。お前が学校に通い、部活で成績を作ることは義務だ。」
「それを放棄した場合、ペナルティを課せられるのはお前自身じゃない。お前を推薦した中学校なんだよ」
考えもしなかったのだろう。
猛は言葉を失っている。
「お前のことを、人はなんて呼ぶと思う?自己チュー、違うか?」
返事を待つ。
しばらくの沈黙。
「……違い…ま、せん」
それまでの厳しい表情を和らげる。
「それでいいんだよ。人間は過ちを犯す生き物だ。けれど、自分の過ちを素直に認められるかどうかで、行く先がずいぶん分かれてしまう」
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