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桜舞う四月。
高校二年。
新しいクラス。
態度が悪く、
愛想がない少年、
という噂の転校生がうちの学校に来るこの時期…
その噂の当本人は、
「……くそ」
早朝、五時半。
「もうやめだ。」
苛立ちに任せ、鏡を乱暴に手の平で拭った。
するとそこには自分の顔。
とても高校二年生男子とは思えないほどの『女顔』
髪を伸ばして顔を隠そうとするが、余計に女っぽく見え、短くすれば女顔が丸だしになる。
蒼井静火の『女顔』は、鏡の前でどんな髪型を繕っても女にしか見えないのだ。
「髪型ごときで変われるなんて、俺が甘かったのかもしれん……」
ため息をつきつつ、髪に手をあて部屋に戻る。
学ランを羽織り、持っていくものを確認したあたりで、わずかな胸の高鳴りを意識した。
―そうだ。今日から新学期。
家を出て今日の事を想像してみる
始業式をして、そして―新しい学校。
イメージチェンジには失敗したが…
希望か期待かはある。
だが、だからといって…
『付き合ってください!』
―いや、俺は男なんで……
『よぉ、ねぇちゃん!これからどっかあそばね?』
―だから俺は女じゃねぇっ!
「あぁあ゛――――!……また、初めからか……」
蘇った苦い思い出に、思わずため息がでてしまう。
と、
「よぉ、姉ちゃん」
背後からかけられた声に気づき、
―仕方がないか。と静火は思い、立ち止まる。
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