P/Normal

2/2
前へ
/38ページ
次へ
桜舞う四月。 高校二年。 新しいクラス。 態度が悪く、 愛想がない少年、 という噂の転校生がうちの学校に来るこの時期… その噂の当本人は、 「……くそ」 早朝、五時半。 「もうやめだ。」 苛立ちに任せ、鏡を乱暴に手の平で拭った。 するとそこには自分の顔。 とても高校二年生男子とは思えないほどの『女顔』 髪を伸ばして顔を隠そうとするが、余計に女っぽく見え、短くすれば女顔が丸だしになる。 蒼井静火の『女顔』は、鏡の前でどんな髪型を繕っても女にしか見えないのだ。 「髪型ごときで変われるなんて、俺が甘かったのかもしれん……」 ため息をつきつつ、髪に手をあて部屋に戻る。 学ランを羽織り、持っていくものを確認したあたりで、わずかな胸の高鳴りを意識した。 ―そうだ。今日から新学期。 家を出て今日の事を想像してみる 始業式をして、そして―新しい学校。 イメージチェンジには失敗したが… 希望か期待かはある。 だが、だからといって… 『付き合ってください!』 ―いや、俺は男なんで…… 『よぉ、ねぇちゃん!これからどっかあそばね?』 ―だから俺は女じゃねぇっ! 「あぁあ゛――――!……また、初めからか……」 蘇った苦い思い出に、思わずため息がでてしまう。 と、 「よぉ、姉ちゃん」 背後からかけられた声に気づき、 ―仕方がないか。と静火は思い、立ち止まる。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加