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空には小鳥達が舞い、花々は甘い香を辺り一面に振り撒いている。
俺はどうして良いかわからず、その場に立ち尽くしていた。
すると、川の向こう岸から聞き慣れた声がした。
「おーい!佑介~!」
(この声は…)
俺は、すぐさま川の向こう岸を凝視する。
そこに立っていたのは、もう何十年も前に亡くなった俺の祖父の姿だった。
「じいちゃん!!」
俺は、この祖父が大好きだった。
だから、祖父が亡くなった時はその死が信じられずに、三日三晩泣き明かした位だった。
その大好きな祖父が、向こう岸に居る。
俺は、急いで川を渡ろうとした。
その瞬間、祖父が叫んだ。
「佑介!!こっちに来るんじゃない!!」
その言葉に、俺の足が止まる。
「…えっ!?何で!?何で駄目なの!?」
俺は、声を張り上げ祖父に尋ねる。
すると、祖父は
「…お前がこっちに来るのはまだ早過ぎる。だから、早く帰りなさい。」
と優しく言った。
俺は、首をブンブンと横に振りながら
「嫌だっ!じいちゃんのトコに行く!!」
と子供の様に駄々を捏ねる。
そんな俺を見ながら、祖父は
「…駄目だ。ほら、これを見てごらん?」
と流れる川面を指差した。
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