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その川面に映ったのは…。
包帯でグルグル巻きになり、体中色んなチューブで機械に繋がれている俺の姿。
その傍らには、俺の家族と痛々しい姿をした由香、そして秋岡が居た。
皆、必死に俺に向かって呼び掛けている。
「早く目を開けなさい!佑介!」
半狂乱で取り乱す母を、父が涙を堪え抱き締めている。
「おい、冗談だろ?本当は起きてるんだよな?なぁ、悪い冗談止めろよ、佑にぃ。起きろよ…なぁ…佑にぃ…。」
下の弟が、ボロボロと涙を流しながらそう呟いている。
それを見ながら一番上の兄は、声を殺し泣いていた。
由香は俺の手を取り、泣きながら
「…佑ちゃん…起きてよ…お願いだから…起きて…」
と祈っている。
秋岡も人目を憚らず大泣きし、肩を震わせていた。
その時、一陣の風が吹きフッと水面が揺れ、元の流れに戻る。
「…わかっただろ?皆がお前を待っているんだ。だから、早く帰りなさい。」
祖父はそう言うと、俺に優しく微笑んだ。
「…でも…」
このまま帰れば、二度と大好きな祖父に逢えない。
そう思った俺の気持ちを察した祖父は
「…また必ず逢える。いつか必ず…」
と言った。
だが、それでも俺はまだ迷っていた。
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