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その時、俺の足に何やら柔らかく暖かいモノが触れた。
ふと、足元に目をやると、そこには見慣れたモノが居た。
姫だ。
ジッと俺を見上げ見つめている。
「ほら、お迎えが来たぞ?その仔もお前が心配で迎えに来たんだ。一緒に帰ってあげなさい。」
祖父はそう言うと、俺に背を向け、そのまま手を振りながら遠ざかって行く。
「…じいちゃん!待ってよ!やっぱり俺、じいちゃんと行きたい!!」
俺はそう叫び、無理に川を渡ろうとした。
だが、姫が俺のズボンの裾を必死にくわえ、行かせない様に踏張っている。
そんな姫に、俺は
「…ごめんな…姫…。」
と言い、姫の口からズボン外し、優しく抱き締めた。
「…俺…じいちゃんと行きたいんだ…」
その時、背を向けたままの祖父が俺に
「馬鹿者!佑介、お前はいつからそんなに弱くなった!!お前にはまだやる事が残っているんだ!!お前を待っている人達の元へ帰りなさい!」
と一喝した。
そして、俺の方に振り返り掌を俺に向け、押し出すような素振りをする。
その瞬間、俺の体は吹き飛ばされる様に後ろへと飛ばされた。
「じいちゃん!!」
最後に見た祖父の目には、溢れ出さんばかりの涙が溜まっていた。
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