10178人が本棚に入れています
本棚に追加
「…う…ううっ…」
気が付くと、そこは病院のベットの上だった。
「‥…!!看護士さん!!先生!!早く来てください!!佑ちゃんが…佑ちゃんが目を覚ましました!!」
嬉々とした由香の声が病室に響き渡る。
その声に反応したかの様に、数人の足音がして誰かが病室に入って来た。
俺を覗き込む顔、顔、顔。
「安藤さ~ん?わかりますか?わかるならゆっくり頷いてくださ~い?」
亡くなった祖父によく似た医師が俺に話し掛ける。
俺は、ゆっくりと頷いた。
そんな俺を見て、医師は
「良かったですね!もう安心です。峠は越えました。」
と、周りに居る家族や由香に笑顔でそう言った。
辺りから洩れる安堵の溜息や泣き声。
泣いているのは、俺の母親と由香だった。
「…心配したんだぞ。…この馬鹿息子!!」
いつもは寡黙な父が、声を詰まらせながらそう言って俺の頭を撫でた。
兄と弟も、そして秋岡も、皆が嬉し泣きをしている。
俺はそれを見ながら、亡くなった祖父の言っていた事を思い出していた。
「皆がお前を待っている。」
そうだよな…じいちゃん。
皆が俺を待っててくれたんだよな。
我儘言って困らせてごめんな…じいちゃん。
最初のコメントを投稿しよう!