悪夢の後

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俺が意識を取り戻した数日後、世間は大騒ぎになっていた。 新聞の見出しにはデカデカと 【ストーカーをしていたのは警察トップの孫!?】 【狂気の愛!被疑者の歪んだ愛情】 などの文字が踊っている。 ニュース番組やワイドショーでは、連日特集で俺の事件を報道していた。 事実、俺の所にも色んなマスコミがインタビューを申し込んで来たが、俺は全て断った。 由紀が可哀相に思えたからだ。 新聞などから見た話によると、由紀はどうやら資産家の娘らしかった。 だが、父親と母親は政略結婚で二人の間には愛情はなかったらしい。 父も母もお互いに愛人を作り、由紀には愛情の代わりにお金を与えた。 そんな孫を不憫に思ったのか、異常な程の愛情を与え甘やかせたのが祖父の森重雷造つまり、今の警視総監だった。 欲しがる物は全て与え、由紀のする事に対して誰にも文句は言わせなかった。 それは、由紀が大人になっても変わらなかった様だ。 (もし、あの女が普通の家庭に育っていたら…。その方があの女、いや、由紀さんも幸せだったのかもしれない…。) 俺はそんな事を考えながら、病室の窓から外を眺めていた。 …トントン 誰かが病室の扉をノックした。
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