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「はい、どうぞ?」
俺は振り返り、病室の扉に向かいそう答える。
カチャリと扉が開き、病室に誰かが入って来た。
秋岡と久徳だった。
「よっ!傷の方はどうだ?だいぶ、良くなったか?」
ニコニコ笑いながら、俺に話し掛ける秋岡。
そんな秋岡を見ながら、久徳は呆れた声で
「…こんな大怪我が数日で治れば、医者は要らんだろう…」
とボソリと呟いた。
そんな事など全く気付かない秋岡は
「ん?何か言った?久ちゃん?」
と尋ねる。
そのやり取りが可笑しくて、俺は久々に声を上げて笑った。
そして、俺は改めて命を救ってくれた久徳に礼を言った。
久徳は困った様に頭をポリポリと掻くと、
「…礼など要りません。私は職務を全うしただけですから。」
と言いながらはにかむ様に微笑む。
そんな久徳に好感を抱きながら、俺は心に引っ掛かっている事をぶつけてみた。
「…あの…今、犯人…いや、由紀さんはどうなっているんですか?」
その瞬間、久徳の顔からは微笑みが消え、急に真面目な顔付きになり
「…由紀さんは今、特別な病院で警察の監視下に置かれています。そして、現警視総監は…責任を問われ、辞任退職されました。」
と答えた。
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