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「辞任退職かぁ…。ま、仕方ないよな。自分の孫が凶悪な事件起こしちまったんだからさ。」
久徳の話を聞き、秋岡が横槍を入れて来た。
そんな秋岡を、俺は視線で諫めながら
「…そうですか…。あ、ちなみに、由紀さんの前回の事件で横領罪で捕まっていた警官の方はどうなったんですか?」
と尋ねた。
久徳は
「はい。横領の事実自体が無かったのですから、調べ直された結果、無事釈放された様です。」
と答えた。
(良かった。)
俺は安心した。
無実の罪を着せられたまま、服役させられるなどあってはならない事だ。
そして、俺は更に気になる事を尋ねる。
「…由紀さんの精神状態は…悪いんですか?」
その問いに、久徳はゆっくりと頷くと
「…どうやら、解理性障害と幼児退行が起こっている様で…現実と夢の狭間を行き来している様な状態らしいです…」
と答えた。
その言葉に、俺の胸はチクリと痛んだ。
俺が、由紀の愛を受け入れればこんな事にはならなかったのだろうか。
由香を選ばずに由紀を選んでいれば…
だが、自分の心に嘘は吐けない。
由紀には可哀相だが、これは仕方のない事なのだ。
病室内に重苦しい空気が流れる。
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