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…トントン
その重苦しい空気を打ち消すかの様に、病室の扉を誰かがノックした。
「はい。どうぞ。」
俺の返事の後、ゆっくりと扉が開き病室に入って来たのは花を抱えた由香だった。
「あ、あの…お邪魔だったかな?」
多分、由香は俺と久徳の話を扉の向こうで聞いてしまったのだろう。
バツが悪そうな顔をしながら、おずおずと尋ねる由香。
俺は、ベットの上から由香に微笑みつつ
「そんな事ないさ。お見舞いに来てくれたのか?悪いな。」
と答えた。
すると、由香は少しホッとした顔をすると秋岡と久徳に向き直り
「あの時は、本当にお世話になりました。」
と頭を下げ、お礼を言った。
秋岡は
「いやいや、とんでもない!由香ちゃんが無事で本当に良かったよ!なっ!久ちゃん!」
と満面の笑顔で言うと、久徳も
「あぁ。本当に良かった。もう手の傷の方は大丈夫ですか?」
とさり気なく気を遣ってくれた。
そんな風にして、皆で雑談をしている最中、秋岡が俺に近寄り耳元でこっそり耳打ちをする。
「もういい加減、告白したらどうだ?今がチャンスだぞ?」
その言葉に、驚く俺。
秋岡は悪戯っぽい笑みを浮かべ、更にこう言った。
「今から告れ!」
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