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「…それじゃ…そろそろ帰るね?」
由香が俺の顔を見上げ、名残惜しそうに囁く。
俺的には、もう少しだけ由香の温もりを感じて居たかったが、ここは病院。
これ以上由香を抱き締めて居たら、俺のちっぽけな理性も何処かへ飛んで行きそうだったので、我慢して由香を抱き締める腕を緩めた。
改めて見つめ逢うと、なんだか気恥ずかしい。
由香は、ベットから離れるとニッコリと微笑み、
「淋しいだろうけど、我慢しろよっ!明日も来るから!」
と言った。
俺は、その言葉に苦笑しながら
「あぁ。わかった。まだ下まで送ってやれないけど、気を付けて帰るんだぞ?」
と言う。
その言葉に由香は頷きながら、バックを手に取り病室を出る。
扉を閉める直前、俺の方に振り返ると
「…佑ちゃん。愛してるよ!」
と顔から火が出る様な言葉と、茶目っ気たっぷりな笑顔を残し帰って行った。
シンと静まり返る病室。
由香が生けてくれた花の香りが漂う。
そんな中、一人幸せそうにニヤける俺。
「愛してるよって、俺の方が先に由香に言いたかったんだけどなぁ…」
そんな独り言を呟きながら、窓の外を眺めると、軽い足取りで帰路に着く由香の姿が見えた。
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