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「こんなとこで、何やってんの?まだ帰ってねぇの?」
あやこの大きなランドセルを見て、岡野は言った。
「…うん」
小さな声に、また岡野が嫌なことを言ってくるかと思ったが、その声を聞いてか聞かずしてか岡野は、あやこが今背にしているその空間を覗き見た。
「なにこれ!!」
あ、と思った瞬間にはもう遅かった。
あやこがひとりで描いた、たくさんの絵を、岡野に見られてしまった。
細かくなったチョークも、昔持ち寄った、薄汚れたおもちゃ達も。
馬鹿にされる。
岡野に見つかったことで、自分の大切にしていた場所は、ひどく陳腐なもののように感じた。
…もう、ここには、来ない。
そう思いかけた時。
岡野は感嘆の声をあげた。
「うっわ!すげぇ!!これって、ひみつきちってヤツじゃね?うぉ~、こんな所に、いつも俺が通ってた所にあったのに、今まで気付かなかった!!」
岡野はいつもの早口で言った。
だが、あやこにはその言葉を聞き取ることができたし、自分が言うべきこともすぐに頭に浮かんで来た。
「そう、ここはひみつきち!あたしだけの場所なのよ」
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