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新学期が始まって、数日後のことだった。
あやこは、まだひとり新しいクラスの中で浮いていた。
休み時間、ちかちゃんやみっちゃんにも会いに行ったけど、二人ともなんとなくバツの悪い顔をして。
きっともう、同じクラスの子と仲良くなったんだろう。休み時間は、クラスの子とお話がしたいの、ってそう言われてるみたいな気がして、あやこは途中で教室に戻ってきてしまった。
このままじゃ、あたし本当にひとりぼっちになってしまう。
そう思ったあやこは、今日はクラスの子に声をかけてみよう、と決意した。
図工の時間、絵の具を使って友達の顔を描くことになった。
内心は逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、チャンスだ!と自分に言い聞かせる。
後ろの席の中川さんに、
「あの、一緒に、描かない?」
と声をかけてみた。
が、あやこのか細い声が聞こえなかったのか、中川さんは知らん顔で他の子のところへ駆け寄っていってしまった。
きっと聞こえないフリをしたんだ。
確証はないのに、あやこは、絶対そうだ、もう中川さんには話しかけないでおこうと心に決めた。
なのに、なのに、先生は、ひとりぼっちのあやこを見かねて、中川さんのグループに、「あやこちゃんも仲間に入れてあげてね」とお願いした。
グループの皆は快く「いいよ!」と承諾したが、あやこはひどく屈辱的な気持ちになった。
絵の具が、涙でにじみそうになるのを必死でこらえていた。
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