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その日、あやこは寄り道をした。
最近は来なくなってしまったけど、ちかちゃんと、みっちゃんと、三人で見つけた秘密の場所だった。
高台になっている公園の、陰にある小さな物置き場。
本当は、ひとりで寄り道は駄目だって、お姉ちゃんもおばあちゃんも言っていたけど、今日はなんだか、ここに来たい気分になったんだ。
即席のブロック椅子に座って、ちょっと陽の暮れかかっている空を見上げても、何も感じなかったが、
コンクリートに、チョークで描いた絵が消えかかっているのを見て、涙が溢れてきた。
どうして。
どうして。
どうして。
もう、何に対して悲しんでいるのか、わからなかった。
ただ涙が溢れてきて。
でも、今、ここにいる間は、泣くのを我慢しなくたっていいんだ、と思った。
誰にもみつからない場所で、あやこはひとり泣いた。
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