そして無力を知って

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結局、ノックは監督が来るまでの30分行われて、その間俺の左手は「素手でグラブになるんじゃね?」ってぐらい腫れ上がった。 因みに、その間サッカー部から11人ぐらいの悲鳴が聞こえたような気もしないが、俺には関係無い。 監督のノックも終わって、次は大好きなフリーバッティングの時間だ。 いそいそと準備していると、村松先輩から呼び止められた。 「永井、悪いんだけど。ちょっとおつかい行ってきてくれない?」 普段から、この先輩にはよくパシられてる。 その反面可愛がられているので、断ったりはしない。 「まぁ、良いですよ。ジュースか何かですか?」 「悪いね、本当は1年に頼みたいけどあいつら要領悪いから。じゃあこれ買ってきて。」 と、先輩はバッティング用の手袋を渡した。 「…先輩、スポーツ用品店まで片道30分以上かかるんですが…。」 「そっ、だから頑張ってね。」 …悪意を感じた。
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