――信誓の章――

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 三成はふんと鼻を鳴らすと、気怠いとでも言うかのように脇息にもたれ、扇子を扇ぐ。吉継はたとえ友の前でもきちんと居住まいを正している己が、何だか急に馬鹿馬鹿しく思えた。 「内府を討つのは今しかない。……おれの言いたいことが、お前にはもう分かるだろう、吉継」  三成が姿勢をそのままに、吉継に問い掛ける。吉継はそのまま、ただ沈黙する。 「吉継、聞いてるのか? この暑さでとうとう逝ったか」 「残念だがまだお前の目の前におるぞ。……だがの、三成よ」  吉継は己の顔面を隠す布を摘み、肌との間を空ける。暑い、とは此処暫く感じていないのだが、肌にへばり付く布が不快なのだ。そんな吉継の姿を、三成は面白くないと言った風に眺めている。 「わしの姿を見ろ。業病に侵され、皮膚は腐り、目もろくに見えなくなった。こんなわしに……もう、何かを成す力など残っとらん」  吉継は布の中で、自虐の笑みを浮かべる。それが、三成の目に触れることは無かったが。  吉継には、長い間患っている病がある。皮膚は膿み肉は崩れ、視力さえも奪う奇病。この彼の病は、今まで治癒するどころか、回復の兆しを見せることすらしなかった。 「もしわしが一人だったら、こんな姿など耐えられずに、とっくにこの腹を切っていただろうよ。だが三成、お前が居たから、わしは今も此処にいる。……だから――」 「それが、何だ? お前の弱音など興味がない。おれが聞きたいのは、俺に力を貸す気があるのかどうかだけだ」
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