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「――っ!」
何か稲妻男が叫んでいる。
だが、生憎ハーレーの爆音と車の騒音でただの上手い口パクにしか見えない。
とうとう、叫ぶのも諦めたのか前方を指差した。
そこには、俺がこんな非凡な体験をするハメとなった元凶である、あのにっくき白いワゴンがあった。
ハーレーはあっという間にワゴンに並んだ。
だが、それもつかの間。ワゴン車は高速を下りるためか、左にウインカーを出す。
高速を下りたら、左右どちらに曲がるかは分からないためなのか、稲妻男はワゴンの真後ろにハーレーをつけた。
高速を下りてすぐの信号は青。
ワゴンはそのまま左に曲がった。
ハーレーも左に曲がる。
だが、この時点で相手も何らか確信を得たのだろう。明らかに運転が荒っぽくなる。
やたらと細い道を選び、くねくねと走りにくい畦道を走ったり……
稲妻男は走り屋魂が覚醒して楽しそうだったが、後部席の俺はたまったもんじゃない。
現代版ロデオをしばらく味わった。
白いワゴンが廃ビルの前で停止したころには、すでに俺は幽体離脱が出来る確信を持っていた、
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