第一話

11/40
前へ
/417ページ
次へ
家に入ると、慌ただしく足音が階段を駆け下りてくる そして下りてきた奴は、何様のつもりか、仁王立ちで俺の前に立ちふさがる 「おかえり弘くん!今日ね今日ね、入学式だったんだよ!」 「奇遇だな、俺もだ」 目の前で嬉嬉として、今日の結果報告をしてくれているのは、我が妹の鈴音だ 今日から中学一年生だから、テンションが高いのではない 雨にも関わらず、風にも関わらず 毎日だ 宮沢賢治か、とツッコミたい だが、妹に懐かれるというのは、悪い気はしない 「あのねあのね、担任の先生ったらね……」 「話は晩飯の時聞いてやるから、家に入れてくれ」 「約束だよ!」 「ああ約束だ」 これまた嵐のように、お母さんを連呼しながら台所に飛び込んでいった 靴を脱いで、階段を上ってすぐ右手にある自室に入る 自室といっても、とても思春期の男子とは思えない簡素なもんだ もちろん、アハーンな本も数冊、勝手に侵入してくる鈴音に見つからないように、様々なカモフラージュをほどこして、完璧に隠蔽している もちろん、普通に漫画もあるぞ
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2018人が本棚に入れています
本棚に追加