第一話

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自転車を引っ張り出して、走ること五分 昼時ももう過ぎたとあり、人もまばらで商品も大したものはなかった とりあえずカップ麺とミニサラダを買い、店外へ出る これで、完全に財布の中は尽きた もう、うまい棒も買えねえ そのまま、家に帰ると、見慣れた背中が玄関の前でうろうろしていた その肩に手をかける 「何してんだ」 「あ、どっかいってた?」 「質問に答えろよ 俺は昼飯の調達」 神堂の眼前にナイロン袋を突きつけてみせる。 「昼飯なら、言ってくれれば家のレトルト類を持ってきたのに」 「おせーよ……」 コイツの家のレトルトだから、その辺のスーパーに陳列されてるもんとは、わけがちがう 昔、一度高級牛肉入りレトルトカレー食って、感動で涙目になったことがある そこ、んなわけねーだろ、って思ってるだろ マジだ 「で、お前の用件はなんだ」 「ああ、いや暇だから」 「お前、友達いねえな」 「お互い様だよ」 ちくしょう 中学の頃から友達といえるやつは、コイツだけというのは寂しすぎるぜ 神堂はみんなに好かれているから、友達でなくともクラスメートに話しかけられていたが 俺は違う 神堂のネクタイと大して変わらない扱いだったからな
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