第四話

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時というものは深夜の高速道路をひた走る2tトラックのように、スイスイと人間という名の街灯を追い抜いていってしまう物だ 事実、俺もその無力な人間の一人である 学校に到着してから諸手でなんとか雪村楓に接近しようと試みたが、雪村楓自身も俺に対して何か思うところが有るようで、俺の気配を感じ取ると小動物のように周囲に悟られぬように逃げ回られた ――そして時は過ぎ、西暦20XX年 滅びた地球で俺は伝説の財宝『ハッカ飴』を求め、その在処を知る唯一の人物雪村楓に接触しようと旅に出た―― というのはもちろん嘘だ だが実際に時計の針はこの不況にも関わらず景気よく回り続け、何も出来ぬまま昼休みを迎えてしまった 本来ならば食堂ダッシュを開始せねばならん時間だが、今日の俺は一味も二味も違う なんせ鈴音お手製弁当があるからな 廊下から聞こえてくる食堂ダッシュの足音をBGMに、優越感をヒシヒシと肌身に感じながら弁当箱の蓋を開いたのだった
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