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商館に出てきた人に名前を名乗り、馬車を指差す。
「この村では馬車を置いても大丈夫さ。馬自体がいないから盗んだってすぐに見つかる」
その言葉に迷いは感じたものの本当に貧しい村で心配はないと思った。
「実は私は行商人をしていまして」
相手の雰囲気が一瞬変わる。
「ほう、行商人ですか」
小さな商館で村人相手に商売をしていれば商人としての腕も錆びるものだ。
「この商品ですとクドフ銀貨が16枚ですね」
「16枚!」
予想以上の値段に驚いた。
クドフ銀貨は5枚あれば贅沢な暮らしさえしなければ一週間は持つ。
しかも商品は蝋燭2本と果物が数個。
とても16枚の価値などない。
「驚くのも無理はないでしょう」
遠くを見るように、視線を泳がした。
つまり何か裏があるのだ。
「おいしい儲け話がありそうですね」
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