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―こっちにはタラがたくさんいるよ。早くおいで。
ある時少年の耳に、懐かしいカアチャンの声が聞こえてきた。
少年は、最後の力を振り絞って、声のする方へ向かって泳ぎ始めた。
しかし少年がまっすぐに向かっていたのはタラなどいるはずもない砂浜だった。
少年はどんどん浅瀬へと入り込み、やがて身動きが取れなくなってしまった。
少年の身体にはもう、海へ戻るだけの力は残されていなかった。
少年は夢を見ていた。
夢の中で彼は、ネエチャンの子供に上手なタラの捕り方を教えていた。
かつて自分が、大好きだったカアチャンに教わったように。
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