クジラの少年

仲間たちとの日々

　ネエチャンに可愛い赤ちゃんができた。
群れの仲間達は新しいメンバーをみんなで守り、育て、そして可愛がった。
ネエチャンの赤ちゃんは他の赤ちゃん同様に、みんなに見守られてすくすくと育った。

　群れはどんどん大きくなっていった。

　やがて群れは、頻繁に餌場を変えるようになった。

　―もう引っ越しするの？

　数日前に来たばかりの餌場を後にする時、少年はニイチャンに尋ねた。

　―もうここには魚はいないからね。

　確かにそうだった。元々それほど多くもなかった魚たちは、今やほとんど姿を消してしまっていた。

　少年達の群れは、数日かけて探しだした餌場を離れ、遠く離れた別の餌場に引っ越しをした。

　ようやくたどり着いた引っ越し先には既に先客がいた。
少年達と同じクジラの群れだった。

　少年達はその群れと闘った。彼らを追い出して餌場を確保するために。

　少年達よりずっと数の少なかった先客達はしばらくの間抵抗していたが、やがて敵わない事を悟って哀しそうに鳴きながら退散していった。